第2回日本サウンドスケープ協会賞
授賞式および記念行事のお知らせ

日本サウンドスケープ協会は、サウンドスケープに関わる優れた活動・業績を有する個人または団体を顕彰します。2022年度の協会賞は、顕彰規定に基づき、顕彰委員会において慎重な選考を重ねた結果、下記の業績を表彰にふさわしいものと認めましたのでここに発表します。授賞式は10月29日14時よりオンラインにて行います。(参加方法はこのページの下の方に記載してあります。)




○日本サウンドスケープ協会賞
 社会的波及効果の大きな実績に対する顕彰


・受賞者:野町鐘音愛好会
・授賞対象業績:金沢市寺町寺院群において鐘の音を保全する長年の活動
・授賞理由:野町鐘音愛好会は平成六年(1994)の除夜の鐘から活動を開始し、金沢市寺町寺院群地区で長年地域の寺院の鐘を有志の方々で撞き続けてきた。環境省「残したい“日本の音風景100選”(1996年選定)」の一つに選ばれている「寺町寺院群の鐘の音」は、同団体の活動があって選ばれたものである。地域住民有志によって四半世紀を超えて継続するのは並大抵のことではない。本活動はサウンドスケープを具現化するとても重要な活動であると認められる。音風景の保全にかかる範となるものであり、その功績を広く知らしめ、記憶にとどめるべきと考える。
・受賞者プロフィール:1994年(平成 6年)に石川県金沢市にて、金沢市の他、小松市(石川県)、飯山市(長野県)、上越市(新潟県)、岐阜市(岐阜県)、高岡市(富山県)による寺町サミットが行われた。その際、当時の山出市長の「寺は残っても鐘の音の風景が失なわれている」という発言が契機となり、 11月に野町鐘音愛好会が発足。毎週土曜日の夕方6時に寺院群66寺のうちのいくつかの寺院の鐘を撞く運動を展開し、以来30年近く活動を継続し、金沢のサウンドスケープとして定着している。当時の会長は橋爪義守氏、現在は3代目の竹内勲氏(81)。現在の会員数は15名で、協力いただいている5ヶ寺(願念寺(真宗大谷派)、因徳寺(真宗大谷派)、龍淵寺(曹洞宗)、妙典寺(日蓮宗)常徳寺(真宗大谷派)の鐘を分担して撞いている。原則としてメンバーが鐘を撞くが、近所の子どもやたまたま訪れた方が撞くこともある。
・受賞者コメント:大変すばらしい賞を戴き、心より感謝を申し上げますと共に、厚く御礼を申し上げます。 この鐘音愛好会は平成6年11月に、発足致しました。 地域の有志の方々が寺町寺院群の、鐘の音を地域に何とかして、残して行きたいと、この会を立ち上げ大変努力をされてきました。その思いを引継ぎ、寺町寺院群の5ヶ寺の鐘を毎週土曜日の午後6時に各寺が同時に鐘をついています。 この鐘の音を地域の大切な財産として、後々迄残して行きたいとの思いで私達会員一同これからも引き続き、お寺の鐘をついて行きたいと思っています。 このたびは、誠に有難うございました。(竹内・野町鐘音愛好会会長)


 




○日本サウンドスケープ協会功労賞
 関連する活動に対する長年の取り組みに対する顕彰


・受賞者:清水恵美子(株式会社時空創造取締役)

・授賞対象業績:本協会事務局担当ならびに協会運営に対する貢献
・授賞理由:時空創造 清水恵美子氏は、4年間にわたって事務局担当理事として、複雑な業務をこなしつつ協会活動の推進を支えた。その功績は多大なものである。
・受賞者プロフィール:大阪芸術大学芸術学部音楽教育学科卒業、公立学校講師を経て、サウンドスケープ研究を契機に都市計画系シンクタンクに就職。後、独立し現職。まちづくりに関する各種調査研究、地域・施設計画、ワークショップやイベントの企画運営、マップ、WEBサイト、冊子、チラシ、ポスター、ロゴ、動画制作等の業務に携わる。
・受賞者コメント:この度は、日本サウンドスケープ協会功労賞を頂き、誠にありがとうございました。 ふり返れば、協会の設立時期、サウンドスケープという新しい概念と出会い、希望と可能性を強く感じたことを懐かしく思い出します。計測可能な現実の音だけでなく、記憶や文化などの要素が加えられることで、音空間はこんなにも豊かに展開されるものかと感嘆したものです。 事務局は、2008年から4年間担当しましたが、アンケートやメルマガ等にも取り組むことが出来ました。任期を乗りきれたのは、協会の皆様のご協力があってこそと改めて感謝する次第です。また、ジャンルを横断して多くの人を包含するこの協会は実に居心地が良く、事務局の日々は、楽しく有意義なものでもありました。 今後共、この柔軟な協会の特性を生かし、“サウンドスケープ”の思想をもっと多くの人に広げて頂けたらと思います。 末筆ながら、貴協会の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。



・受賞者:西村昌子(ブンテックNPOグループ代表)

・授賞対象業績:サウンドスケープに関わる長年にわたる市民活動
・授賞理由:受賞者は、生涯学習フェスティバル「まなびピア三重2000」をきっかけに、全国から集まった研究者たちとの連携のもと、サウンドスケープに関連する各種プロジェクトを市民の立場から企画・実施し、三重を拠点に人々のネットワークづくりに尽力されてきた。その一連の活動は「生活からのデザイン」を大切にするサウンドスケープの思想に照らし合わせたとき、その長年にわたる地道な活動は、その内容を社会に広く知らしめ、記憶に留めるべきものである。
・受賞者プロフィール:四日市生まれ、静岡育ち。生田流正派准師範。転勤で四日市市に移り、地域社協のまちづくり企画の中で琴を使って校歌を歌う会等、地域での活動を継続。2000年の「まなびピア」で「音から環境を考える」というテーマをきっかけに、サウンドスケープの活動を行う。「音の泉サロン」等で、「音地図」を地域の人達が繋がるツールにすることを提案。常に一市民の視点から音環境を考え続けている。
・受賞者コメント:このたびは、功労賞を頂き、もったいなく、そして嬉しく思っております。 私は、日常生活の中で地域の住民が繋がることを考えて続けて様々な活動をやってきました。その中で、高齢者と幼児の交流会を企画した時は、音や音楽はそうした世代が隔てなく関わることができるものだと気付きました。ですから、音環境の研究をしてきたわけではありませんでしたが、こうした活動を続けているうちにサウンドスケープに出会ったという感じです。特に「音地図」は音と場所が同時に示されるので、地域の人達が音を通して地図上でも繋がることができるものだと思います。 また、成人式で聴いた琴の音色に惹かれ、生田流に入門しました。そして「水琴窟」と「琴」の文字が重なることから、自宅に水琴窟を設置しました。 現在は、音楽で市民力のネットワークを楽しめる環境につながりを感じながら、こうした活動が充実していくよう祈っています。




○日本サウンドスケープ協会奨励賞
 近年の研究や実践の活動に対する顕彰


・受賞者:吉田瞳(京都大学大学院文学研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員)

・授賞対象業績:「中世後期ドイツ都市における管楽器の社会的機能――ニュルンベル クの事例を中心に」
・授賞理由:授賞対象業績は、中世後期のニュルンベルクを事例に、祝祭や儀礼で楽師 が演奏する管楽器の音色の社会的機能を考察したものである。議事録や条例などの 文献を丹念に辿り、当時の管楽器がどのように位置づけられていたかを描き出して いる。その内容は歴史学的な意義があるとともに、サウンドスケープデザインの実 践にも応用される可能性があるものと評価できる。今後のさらなる展開を大いに期待し、奨励賞を授賞する。。
・受賞者プロフィール:西洋史/中世ドイツ史/音と声の歴史学/感性史。中世ドイツ都市における都市統治と聴覚情報の関係を研究している。現在、論文化を図っているテーマは「管楽器の物質文化論」、「管楽器による信号音と時の感性」、「武器としての侮辱の声」。ほかに歴史系コンテンツに関わる活動やyoutubeなどを用いたアウトリーチにも関心があり、たびたびイベントを企画・実施している。
・受賞者コメント:この度は名誉ある「奨励賞」をいただくことができ大変光栄に思っております。歴史学会やサウンドスケープ協会において、ご支援を賜った多くの先生方や友人諸氏に、この場をかりて厚く御礼申しあげます。受賞論文は私の処女作であり、中世後期のヨーロッパ都市における管楽器の社会的機能を論じるものです。現在は同時期の金管楽器のマテリアル・ヒストリーに関して論文を執筆中です。刊行されましたらそちらもご笑覧いただけますと幸いです。本賞受賞を励みとしいっそう精進させていただく所存です。今後ともよろしくご指導・ご鞭撻賜りますようお願い申しあげます。



・受賞者:古山詞穂(東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化学専攻音楽音響創造 修士課程在籍)

・授賞対象業績:「R.マリー・シェーファーの言語観とテクストに関する研究――合唱 作品における「サウンドスケープのこだま」に着目して」
・授賞理由:授賞対象業績は、「サウンドスケープのこだま」という概念に着目し、R.M. シェーファーの言説と音楽作品について考察したものである。シェーファーのいく つかの合唱作品を取り上げ、歌われるテクストの扱い方にシェーファーの言語観が 反映されていることを明らかにした意欲的な研究であり、音楽学・言語学を越境したサウンドスケープ研究を拓くものとして評価できる。今後のさらなる展開を大いに期待し、奨励賞を授賞する。
・受賞者プロフィール: 東京藝術大学音楽学部卒業。2016年、同大学の学生による芸術ワークショップチーム “Senju Lab Kids” を立ち上げ、以後代表として、幼児から大学生まで幅広い人々を対象に活動を続けている。著書に、『〈意味〉としての声、〈音〉としての声: ワークショップ「言葉と音楽の間を探る—日常的な言語コミュニケーションから芸術音楽へ」』(共著、『触発するアートコミュニケーション: 創造のための鑑賞ワークショップのデザイン』11章、あいり出版) がある。
・受賞者コメント: 研究の端緒は、次のような空想的な考えでした。「『み・ず』の二つの音が、水という物質そのもののあり方を描写しているようにきこえる——冷たく透明な液体が僅かに湧き出で(「み」)、それが乾いた土や岩に染み入ってゆく(「ず」)様子が、このたった二つの音節の連なりによって描き出されているようではないか」。そして「もしそのような擬音・擬態的な言葉のはじまりがありうるのならば、言葉と音楽、あるいは発話と歌唱という二つの営みを、『音 / 声による表現』という同じ地平から捉えうるのではないか」。言葉の音に耳を傾けるこの小さな感動の正体を探りはじめたとき、行き当たったのが、シェーファーの合唱曲と、「サウンドスケープのこだま」というアイディアでした。彼の作品と思想への感銘を原動力に、大変拙いながら熱意をもってはじめて形にした論文を、このように取り上げていただいたことの喜びを噛み締めつつ、身の引き締まる思いでおります。この度は、栄誉ある賞を賜り心より感謝申し上げます。



第2回日本サウンドスケープ協会賞
授賞式および記念行事

日時:2022年10月29日(土)14:00- (最長17時終了予定)
会場:オンライン(zoomを利用)
定員:80名 
要申込https://forms.gle/89gcsHM8JTY72Mj88
お申し込み方法:上記URLまたは下記ボタンをクリックしてお申し込みフォームへお進みください。


式次第:(全体司会|小西潤子委員)

14:00 表彰式
    開会の辞(鳥越けい子顕彰委員長)
    挨拶(土田義郎理事長) 
    各賞授与

14:30 受賞者スピーチ
    奨励賞
     吉田瞳さん  (受賞者紹介|箕浦一哉委員)
     古山詞穂さん (受賞者紹介|箕浦一哉委員)
    功労賞
     清水恵美子さん(受賞者紹介|平松幸三委員)
     西村昌子さん (受賞者紹介|小林田鶴子委員)
    協会賞
     野町鐘音愛好会 (受賞者紹介|土田義郎委員)
     会長挨拶 活動の様子の動画とインタビュー(30分)

16:30 懇談会:テーマ「音風景はどうしたら未来につなぐことができるか」(司会|土田義郎理事長)

17:00 閉会の辞(鳥越けい子顕彰委員長)






*お申し込みフォームには「Googleフォーム」を利用しています。お申し込みが正常に完了した場合は、Googleフォームより自動返信メールが届きます。届かない場合は、正常にお申し込みが完了していない可能性がありますので、お申し込み後の自動返信メールの受信の有無にご注意ください。ご不明の点がございましたら、事務局までお問い合わせください。
*会場URLのご案内予定日:開催日が近づきましたらZOOM会議室のURLとパスワードをお送りします。





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日本サウンドスケープ協会シンポジウム: 1993年の協会設立以来、テーマを設定して公開の場で広く議論するシンポジウムを年1回開催してきました。近年も「音風景は文化遺産になりうるか」「今、京都から再び」「いわてのサウンドスケープ」「東京水系のサウンドスケープ:都市と社会のリ・デザイン」「劇空間の音風景 声による演出から見る古今東西の世界観」など多様なテーマ設定でサウンドスケープをめぐる議論がなされています。近年のシンポジウム情報は「活動の一覧|シンポジウム」に掲載しています。

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